尿路変更
膀胱全摘出手術を行った場合、そのままでは尿を溜めることができなくなるため、尿路変更の手術も行われます。
尿路変更には、お腹の中にストーマ(人工膀胱)を入れる方法と、ストーマを使わない方法があります。
ストーマを入れる場合は、パウチ(袋)に尿を溜める方法(尿失禁型ストーマ)と、自己導尿で排泄する方法(尿禁制型ストーマ)があります。
ストーマを使わない場合は、尿管をS状結腸に接合する方法(尿管S状結腸吻合)と、腸管で作った膀胱を尿道に接合する方法(自排尿型新膀胱)があります。
ただし、尿管S状結腸吻合は合併症を引き起こすことが多いため、自排尿型新膀胱が主に行われています。
■尿失禁型ストーマ(尿管皮膚ろう)
尿失禁型ストーマ(尿管皮膚ろう)は、腹部の皮膚から尿管を出す方法です。
手術は比較的簡単で腸管も利用しないので、手術後の回復が早い特徴があります。
そのため、高齢者や合併症の危険性が高い場合に採用されます。
ただし、尿管を皮膚から直接出すため、感染症にかかる確率は高くなってしまいます。
■尿失禁型ストーマ(回腸導管)
尿失禁型ストーマ(回腸導管)は、回腸(小腸の一部)を約15センチ遊離して、一方に尿管、もう一方を腹部に出してストーマとします。
腸管を使用するので手術後に体にかかる負担は大きく、腸閉塞を起こす可能性もあります。
しかし、回腸を使って尿を体外に排泄させるので、感染症の危険は少なくなります。
また、この手術法は、世界的に見ても尿路変更手術の標準になっています。
■尿禁制型ストーマ(インディアナパウチ)
尿禁制型ストーマ(インディアナパウチ)は、回腸、上行結腸、横行結腸の一部を使って、尿を溜めるためのパウチ(袋)を作る方法です。
パウチに溜まった尿が逆流したり漏れないように弁を作ったり、様々な工夫がされているので、パウチをストーマにつけなくても尿漏れは起こりません。
尿を出すためには、自分でストーマから専用カテーテルを挿入して自己導尿を1日数回行う必要があります。
この手術は多くの腸管を使うため、手術時間は比較的長くなり、手術後に合併症の危険も多くなります。
しかし、普段は尿を溜める袋をつけなくて良い、という良い面もあります。
■尿管S状結腸吻合
尿管S状結腸吻合は、尿管をS状結腸に吻合する手術法です。
尿は肛門から排泄され、ストーマも不要なので、生活の質(QOL:Quality of Life)の向上に繋がりますが、長期的に見ると逆流が起きたり、感染症の危険性があるため、現在ではあまり行われていません。
■自排尿型代用膀胱(ハウトマン型代用膀胱)
自排尿型代用膀胱(ハウトマン型代用膀胱)は、回腸を約60センチ遊離してパウチを作る手術方法です。
作ったパウチの下側に穴を開けて尿道と繋ぐので、尿が漏れる心配もありません。
ただし、作られた新膀胱は収縮機能を持っていないため、腹圧をかけて排尿することになります。
尿が全て出ないこともあるため、自分でカテーテルを挿入し、自己導尿を行う必要もあります。
しかしながら、最近では合併症が少ないために注目されている手術法でもあります。